ヒゲブトハナムグリ Anthypna Pectinata 2016.02.09 -- 2

2016.02.09(19:05)

 ヒゲブトハナムグリ Anthypna Pectinata
 昭和2年発行の「日本甲虫図鑑」山脇源太郎著 に記載があるらしい。
 図版では、茶褐色の小さな甲虫で、首と背の間がくびれて、第一肢の生えたごつい首の前に、さらにブラシのようなものがせり出している、という。解説では「本州、東京附近に産し、バラ、クサギ、その他各種の花に来集する」と書かれているそうだ。
 
 そこまで書いて写真はないのか、と問われても困る。
 この図鑑は昭和43頃、欠落のない完本なら20万円で買う、という人があったと、じつは三島由紀夫が書いている。
 解説には続きがあって
 「この甲虫を乾燥させ、砕いて粉末にしたものを、皮質性催眠剤プロムワレリル尿素に混合して服用させると、脳催眠のあいだに命令して、当人を、いかなる方法の自殺へも導くことができる」と書かれているそうだ。

 こんなことが書いてあるのは三島由紀夫の小説で、ちくま文庫で第26刷が昨年12月に発行されたので、いま書店で入手が可能である。題名は『命売ります』だ。
 読み出したらやめられないエンタテインメントで、展開が速く、先が読めない。著者は大衆向けのおもしろい小説を書こうと、本気で取り組んだ様子がうかがわれる。
 
 主人公はいまでいうコピーライターで、ある日急に何もかもがばからしくなって睡眠薬自殺を試みたが失敗してしまう。その心理は三島由紀夫らしく上手に説明してあるが、文芸作品のような書き方ではなく、あくまでエンタテインメント性を重視している。
 さて、「どうせ命拾いした命だ」とばかりに、主人公は新聞に広告を出した。「命売ります」というのである。
 やがて買い手が付くのだが、なんとも妙な買い手ばかりなのだ。
 「ヒゲブトハナムグリ」は二人目の買い手に関連して出てくる図鑑の話だ。

 あまりにおもしろい物語なので、広く紹介したいと思って本稿を書いたが、当ブログの傾向に合わせて、ハナムグリのことから書いてみよう、と思ったのである。
コメント
jugon さん、
おっしゃる通りでしょうね。
小説中「欠落のない完本なら20万円で買う」というのは、強い効能について記載のあるところを切り取ってしまわれた図鑑が多い、ということのようでして、「殺人科」だけでなく「好色科」なんてところも覗いてみたいですね(笑)
【2016/02/10 18:29】 | ディック #22hNL7Yc | [edit]
ディックさん、こんにちは。

ご紹介の「日本甲虫図鑑」分類の仕方が面白いのは、乾燥させた甲虫の使い道(?)で分類されているからでしょうか?
三島由紀夫は、ほとんど読みましたが、「命売ります」はタイトルを知っているだけで読んでいませんでした。
読んでみますね。
ヒゲブトハナムグリの写真も探してみたいと思います(^^)
【2016/02/10 15:56】 | jugon #ehuBx04E | [edit]
三島由紀夫の著書にこういうのもあるのですね。(あっ、そもそも三島著は読んでないかも)
「いかなる方法の自殺へも導くことができる」・・・スゴイ効能。この甲虫も見たくなります。
【2016/02/10 12:47】 | 山ぼうし #- | [edit]
子どもの頃、ハナムグリはよく見ました
カナブンより小さい身体がかわいく思えました

ご紹介くださった著作、
おもしろそうなので早速、アマゾンで注文させていただきました
【2016/02/10 08:50】 | FREUDE #6AWUBD.o | [edit]
アトムパパ さん、
Wikipedia ではコガネムシ科ヒゲブトハナムグリ亜科に分類されているようですが、記事中の「日本甲虫図鑑」では、「第三類 殺人科」に分類されています(笑)。ちなみに、第二類は催眠科、第一類は好色科だそうです。
【2016/02/09 22:49】 | ディック #22hNL7Yc | [edit]
こんにちわ。

ヒゲブトハナムグリ、ネットで探してみました。
こんな虫なんですね~。
ヒゲが特徴的ですね!
【2016/02/09 22:41】 | アトムパパ #ulYx6Mu6 | [edit]
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