ミケランジェロのダビデ像 2015.9.25 -- 2

2015.09.25(20:00)

150910_アカデミア美術館 ダビデ像1

 撮影場所:フィレンツェ アカデミア美術館
 撮影日:2015.9.10

 さて、みなさんの眼には 2015.9.24 — 2 のシニョーリア広場のダビデ像(レプリカ)と、とくに大きな違いはない、と目に映っているかも知れません。
 しかし、アカデミア美術館のダビデ像の部屋にいたかみさんと私は、この像の圧倒的な存在感に、びっくりして見上げていたのです。
 いったい何が違うのか ?


150910_アカデミア美術館 ダビデ像2

 どうしてこんなに違うのか ?
 かみさんは「大きさが違う」と言ってました。でも、まさかレプリカの大きさが違うとは思えず、この記事を書く前に確認しました。レプリカは実物大だそうです。
 ぼくも「まさか」とは思いながら、そんなこともあるかも知れない、と感じていたのです。
 「大きさが違う」という実感。これはダビデ像がそう感じさせた、ということで、私は「圧倒的な存在感」と書きましたが、「その存在感が大きいと感じさせた」としかいいようがありません。


150910_アカデミア美術館 ダビデ像3

 「存在感」の中味の分析が科学的でないと言われるかも知れません。
 それが容易には分析できないからこそ、ミケランジェロのような芸術家が賞賛されるのだろう、と思います。
 前の記事で、「絵画にせよ、彫刻にせよ、レプリカ、写真、印刷物でその美しさを伝えられるものではない」と書きました。私の写真は拙い手遊びで、ダビデ像を目の前にしたときの畏怖のような感動はとても伝えられません。


150910_アカデミア美術館 ダビデ像5

 ユダヤ人の建国物語は旧約聖書に描かれていますが、イスラエルは外敵のペリシテ人(実態はいまひとつ不明)の攻撃に悩まされていました。
 ゴリアテという名の巨人がペリシテ軍にいて、これがとても強いのです。イスラエルの兵士は恐れをなして防御戦に苦しんでいましたが、そこへダビデが登場。彼の武器は川原の石と投げ紐だけ。
 ダビデが狙いすまして放った石はゴリアテの眉間に命中。ダビデはすぐに進軍してゴリアテの首を取りました。
 これをきっかけにペリシテ軍は敗走。ダビデはイスラエルの英雄となりました。
 ミケランジェロのダビデ像で、ダビデの右手がやや大きく強調されているのは、この物語が背景にあるからだ、ということのようです。


150910_アカデミア美術館 ダビデ像6

 しかし、16世紀のフィレンツェと旧約聖書時代のユダヤの歴史にどのような関係があるのでしょうか。
 なぜフィレンツェでは「ダビデ像」が人気を集めるのか。ミケランジェロ以外にも、フィレンツェには数多くのダビデ像があり、当時人気の題材でした。(ドナテッロやデルヴェロッキオのダビデ像を、いずれ当ブログでも紹介したい、と思っております)


150910_アカデミア美術館 ダビデ像7

 諸説あるかと思いますが、若桑みどり さんの『フィレンツェ』(講談社学術文庫)によりますと、「ミケランジェロがダビデ像を制作していた1501年から1530年頃、フィレンツェは国境に迫るボルジア軍との戦争準備中」でした。 
 また、「マキアヴェリは『金目当ての傭兵よりも、イスラエルのダビデのような人物が必要だ』と『君主論』に書いていた」そうです。
 周辺の他の都市国家や、フランス、教皇庁などと緊張関係にあったフィレンツェが、ダビデのような英雄の像に自国の戦勝を重ね合わせていたのだろう、ということのようです。
 ミケランジェロのダビデ像は、ドナテッロやデルヴェロッキオなどの数々の名作よりもはるかに大きく、力強いダビデ像として仕上げられたのです。


150910_アカデミア美術館 ダビデ像8

 なお、ミケランジェロはこの最後の写真のように遠くからのショットではなく、ダビデ像が下から見上げられることを想定していたのではないか、と思われます。
 全体のバランスを見ていると、どうも東大寺の金剛力士像を制作した運慶のようなことをやっているように感じられます。


コメント
おはようございます。

思い出しました、私も本物を見たとき、「レプリカと違って(笑)大きい!」と思ったのでした。

そのときはそれから追求することもなく、当たり前に思って帰国、今に至っていました。
まさか同じ大きさだったとは……。

不思議ですね、やはり置かれている場所との関係があるのでしょうが、レプリカをこの場に運んできても、やはり本物のほうがはるかに大きく感じるのだと思います。

勉強になります。

右腕に走った血管に驚きます。
【2015/10/02 08:11】 | takae h #- | [edit]
レプリカをどこで見たのか思い出せないのですが、巨大な像を下から見上げ、その生々しさに圧倒され威圧され、大いに驚いたことを覚えています。

実物はレプリカとは違ったのですね!
形に現れない微妙な何かを感じ取る感性はとても貴重だと思います。
その力を磨いていくには心をプアにすることでしょうね。

下の方からのアングルの取り方が実にお上手です。
こんな風に感じてほしかったと、ミケランジェロは期待していただろうなという気がします。
美術の教科書など、真正面からの写真が多いですが、ぜひともこのアングルで載せてほしいですね。
【2015/09/27 11:38】 | とんとん #uvcXFM.c | [edit]
ぐるっと回って綿密な撮影。
居ながらでも迫力が伝わってきます。撮影するディックさんの熱気も。
筋肉隆々という感じではないが、きっと理想の体形なんでしょうね。
東大寺の金剛力士像、確かに似たものがありますね。
【2015/09/27 08:51】 | 緑の惑星人 #t1t2q.5s | [edit]
本物を見る感動は全然違うのでしょうが、でも、ディックさんのお写真はもちろんですが、その文章から感動が伝わってきますよ。
ミケランジェロ、天才なのはわかっていますが、実際に見て、その素晴らしさは倍増するのでしょうね。
ますます行きたくなりました。
【2015/09/26 12:00】 | YUMI #2Qwf./yA | [edit]
科学的な証明は左脳の仕事なのでしょう
感動は右脳の担当であり、
無理に科学的根拠を追求する必要はないと思います

美術にも造詣の深いディックさんの感動は
巧みな文章表現によって
私にも伝わってきました
【2015/09/26 08:25】 | FREUDE #6AWUBD.o | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2015/09/26 06:31】 | # | [edit]
小肥り さん、
代わりに解説していただきました。おっしゃる通りです。
ふつうはゴリアテの首を踏み付けているダビデを描くところ、これから投石してゴリアテを倒すぞ、というところですから、腕と手はとくに目立つように配慮された、と思います。
なお、ミロのビーナスは見たことがありません。ルーブルへ行かないと、見られないでしょうね。行きたいなあ。
【2015/09/25 23:46】 | ディック #- | [edit]
右手には武器である石を持ってるということですね。左手は投石用の投げ紐のようなのを肩にかけている。
本物とレプリカは違いますか。そうでしょうね。
昭和38~9年ころ、ボクは学生でしたが7時間ほど並んで上野でミロのビーナスを見ました。たぶんルーブルから唯一外国に出た例ではないかと思います。
今は見たことだけを覚えてて残念なことに感動は蘇ってきません。
(↓)昆虫の幼虫は苦手です(特に蝶)。タイトルだけを見ました。ごめん(涙)。
【2015/09/25 23:20】 | 小肥り #mQop/nM. | [edit]
空見さん、
どこから見ても、このダビデ像は はっとするほど見せるのですよ。
たとえ適当に場所を選んで、いい加減に撮影しても、ミケランジェロがよい写真にしてくれる…、そんな感触です。
大した努力もしていないのに、よい写真ができあがってしまう。そんな作品です。
【2015/09/25 23:01】 | ディック #- | [edit]
jugon さん、
筋肉むきむきの男性裸体像がたくさん…、というのが私のミケランジェロのイメージで、それは私の好みではないから、ちょっと一歩ひいて構えておりました。
逆にだからこそ、「えっ!? 」という衝撃がありました。
やはりこの人はすごいと、つくづく感じ入りました。
【2015/09/25 22:56】 | ディック #- | [edit]
ディックさん、こんばんは。

ミケランジェロのダビデ像、東京にもあったかしら?国立西洋美術館。あったようななかったような・・・。
やはり本物を目にした時の感動は、生涯忘れられるものではありませんね?
ディックさんのダビデ像への思いがどのくらいだったのかは分かりませんが、その思いが強ければ強いほど、その場から動けなくなりますね。
ディックさんのお写真は迫力があります。

↓キアゲハの幼虫は、ナミアゲハとは随分違いますね。蝶になったらとても良く似ているのに(^^)
【2015/09/25 22:40】 | jugon #ehuBx04E | [edit]
腕とか脚が特に見事です。やはり写真撮影の角度などもうまい。存在感がハンパないですね!拍手
パセリは献上ですかね(..)

【2015/09/25 20:24】 | 空見 #- | [edit]
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