理化学研究所・NMR施設の見学

2013.10.05(21:55)

NMRを格納設置しているドームの外観130928

 理化学研究所というのは、物理学、化学、工学、生物学、医科学など基礎研究から応用研究まで行なう日本で唯一の自然科学の総合研究所で、独立行政法人であり、通称「理研」と呼ばれています。
 国の研究機関が独立したようなもので、国立大学と似たようなもの、というイメージで考えてよかろうか、と思います。
 理研の横浜研究所が鶴見にあるので、9月28日、その一般公開日に見学してきました。
 横浜研究所の特徴は、生命医科学、環境資源科学の分野に強いことで、その一例として、大変高価なNMR施設を数多く保有しています。
 そのNMR施設を今回は見学させてくれて、糖の構造を分析する様子を一例として、見せてくれました。


800番のNMR130928

 まず上の写真ですが、上の写真は公開実演のあった部屋の近くの、もう一段階 大型のNMR施設です。こんなものか、と思ってください。

 NMRについては「知恵蔵2013」の解説を自分で補足しつつ、できるだけわかりやすいように説明してみます。
 NMRとは「核磁気共鳴」Nuclear Magnetic Resonance のことです。
 原子核のスピンを利用して物質の構造・状態を「非破壊的に調べる」方法です。
 タンパク質など有機化合物の立体構造を調べて、新薬の開発などに使います。
 「非破壊的に調べる」というところが大切で、対象物が小さいからといって、X線などを照射すると対象物が壊れてしまいますから、それを避けるのです。
 タンパク質はたとえば水素、炭素、酸素、窒素、硫黄などでできた複雑な化合物で、うかつにX線などを当てれば壊れてしまう。だから強い磁場の中においた状態で、それぞれの元素の様子を測定し、それぞれの元素の立体的な位置を測定しようということです。


公開測定実演のあったドーム1130928

 NMRは、磁場のかかった原子核のスピンの状態を測定する機械です。
 磁場をかけると、原子核はスピンの状態によって二つのエネルギー状態に分裂し、そのエネルギー差に対応する波長の電磁波を吸収するようになるのだそうです。
 エネルギー差が生じる理由は、スピンによるわけですが、「スピンとは何だ?」と始めるとたいへんなので、これは興味のある方はご自分で勉強してください。とりあえず、磁場をかけてから、電磁波を照射し、原子核の光のスペクトル(各波長成分の分布)を観測して分析するんだ、と納得してください。
 エネルギー状態によって異なる吸収スペクトルの様子を測定して調べる、ということをやるのです。
 
 さて、スペクトル(各波長成分の分布)は、水素、炭素など、それぞれに固有のものがあるので、その強さなどを測定して、もうひとつの水素原子はこの水素原子より近いところにあるとか、遠いところにあるとか測定しつつ、それなら立体的にはこの辺りの位置にあるんじゃないかとか、そんなふうに調べながら、化合物の立体構造をコンピュータを使って解析する、ということをやっているようです。

 大きな機械ですが、分析する対象の物質などを試験管のような容器に入れて、この大きな機械の一番上のところから少し内側へ入れるのです。これで検査対象物は強い磁場の中に置かれたことになります。容器は噴出する空気によって固定され、それに電磁波を照射し、そのスペクトルを測定してコンピュータにデータを送る。それをパソコンでコントロールし、専用プログラムで調査・加工する、ということをやっていました。
 機械の上へ担当者が昇るわけですが、強い磁場が発生するので周囲の階段や手すりはすべて木製。部屋の壁も木造のドームです。ドームの外壁を撮影した写真は金属色に輝いていますが、素材は磁場の影響を受けないアルミニウムだそうです。
 ロープを張ったすぐ近くで観察させてくれますが、時計を外せ、カメラはダメとか言われませんでしたから、磁力線はドームに反って縦楕円に発生している、ということなのでしょう。


公開測定実演のあったドーム130928

 NMR装置の横に700とか800とか書いてありますが、強い磁場を発生する機械のほうが精度の高い測定ができる。700の機械が約3億円、番号が100上がると価格は2倍になるそうです。
 場の雰囲気からなんとなく察せられるのは、公開されているこの施設は学生または初級研究者用の施設で、新薬開発などに実際に使用されるNMRはどこかこの近くに、きわめて強力な磁場を発生させるマシンが置いてあるのではないか、と思われました。

 そんなにお金をかけてタンパク質の立体構造を解析して「いったい何の役に立つのか」と思われる方もいらっしゃるでしょうが、癌などいくつかの病気は、体内のタンパク質が介在して悪影響を与えていることが多く、病気にならないようにするには、そのタンパク質が働かないようにすればよいわけです。たとえば、悪いことをしているタンパク質の特定の部分に別の物質を付けてしまい、働かないようにするとか、そういう方法があるわけです。
 闇雲にいろいろな試薬を用いて試しているよりも、タンパク質の立体構造がわかれば、そこにはめ込みやすい物質を合成できる、というふうに、新薬開発技術者は考えるのです。
 つまりタンパク質の立体構造が判明すれば、新薬開発のスピードが速くなるのです。


小さなNMRを複数設置した研究施設130928

 大雑把な説明で不正確なところがあります。しかし、理科系でない一般人が理解しようとするのは、この程度の説明でないとかえって混乱してしまい、わけがわからなくなると思うので、いい加減なところがあってもはご容赦ください。
 上の写真は公開されていた研究実験施設で、この大きな部屋を中心にして、NMRを設置しているドームが取り囲んでいます。上の写真にもNMRが見えていますが、600番ですから、発生磁場の弱い小型のものです。

 じつは、理研の隣りには横浜市立大学の生命医科学研究科があります。ほとんど同居状態です。
 横浜市大のほうでは、NMRではなくて、X線の照射によるタンパク質の立体構造解析法を聞いてきました。
 「なんだ!先ほどタンパク質が壊れてしまう、と言っていたではないか」と思われるでしょう。
 これはこれでまた、話がかなりややこしくなりますので、今日はこのくらいにさせてください。

 NMRにつきましても、もう少し自分の理解が進み、もっとわかりやすく説明できるようになりましたら、また記事にしてみましょう。
コメント
ディックさま^^こんにちは~♪

私にはレベルが高すぎます。
聞き慣れない用語ばかり出てまいりました。
タンパク質のフシギ、
これからの新薬の開発、
ディックさまは何事にも造詣が深く、読ませていただきました。
先ほどは、ありがとうございました。。。
【2013/10/06 16:15】 | 紗真紗 #- | [edit]
閉じられた空間を外側から見るのですから
こんなものか、としか言いようがありませんよね
外側からは何の変哲もない金属が
中では凄いことをやっている訳でして…

多岐にわたり知識が豊富なディックさんですから
解説の内容が深いですね
【2013/10/06 06:02】 | FREUDE #6AWUBD.o | [edit]
アルミが磁場の影響を受けないなんて、驚きました。
と、言う具合に、知らないことばかりで、深い意味まではわからなくても興味がわいてきます。
知見が蓄積されて、すばらしい新薬が開発されるといいですね。
【2013/10/06 00:09】 | takae h #A5.soH/6 | [edit]
ん~難しい話は置いといて、気になる単語を抽出すると、
 タンパク質が働かないようにすればよい・・・
 タンパク質の立体構造が判明すれば、新薬開発のスピードが・・・
タンパク質ってダイエットをしたい方の敵みたいな扱いですが、
とても大切なもので、深~い研究をしているのですね。

このドームと中心に機械がある様子は、映画かドラマの何かで
見たような気がしますが、思い出せません。
【2013/10/05 23:38】 | 山ぼうし #- | [edit]
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