雑司ヶ谷・鷹狩場跡と鬼子母神

2012.09.08(18:13)

 雑司ヶ谷の鬼子母神の社の近く、田畑に囲まれ鄙の香がたちこめる一角に矢島家がある。矢島家は代々の御鳥見役だ。御鳥見とは鷹の餌となる鳥の棲息状況を調べる役職で、将軍家の御鷹場の巡検、鷹狩のための下準備などが任務だ。
 主人公は珠世という四十になる女性で、父の久右衛門、夫(婿)の伴之介、長男と次男、次女の五人暮らしだが、連作短編集の第一話の表題は『千客万来』である。
 長女が里帰りしているところへ、物語の初っ端から居候が何人も転がり込んでくる。けっして裕福ではない御家人の家族で、家は手狭だし、毎日の食事のやりくりでさえ大変なのだ。しかし、珠世は助けを求めてきた者を断れない性分だし、物事は常に明るく考えて、けっして笑顔を絶やさない。
 この第一話がよくできている。父の久右衛門を頼って尋ねてきた浪人と、次男が助けた女剣士とは敵同士だったのだ。それが同じ矢島家の一つ屋根の下へ寄り集まることになろうとは…。

 上は諸田玲子さんの時代小説『お鳥見女房』の冒頭です。
 シリーズになっていまして、巻が進むに従い、長男の縁談が水野忠邦邸から舞い込んできたり、なかなか読ませます。
 この小説の舞台になっているのは雑司ヶ谷。江戸時代の雑司ヶ谷は将軍家の鷹狩場だったわけです。
 鷹狩場はいまは雑司ヶ谷霊園となっていますが、小説に再三登場する雑司ヶ谷の鬼子母神は現在も残っています。どんなところだったのか、ぼくは一度訪れてみたい、と思っていました。護国寺の散策は、雑司ヶ谷と鬼子母神を訪ねるための、単なる出発点でした。


鬼子母神出現所の碑120824

 ところで、鬼子母神像は清土町というところで見つかったことになっています。田畑を耕したところ鬼子母神像が見つかり、偉い坊さんに見てもらったという次第。
 まずは清土町の鬼子母神像出現所を訪れました。


鬼子母神出現所のお堂120824

 上の写真のようなお堂が建っていました。


雑司ヶ谷霊園1120824

 鬼子母神堂まで行くのに、雑司ヶ谷霊園の中を通ります。ここが『お鳥見女房』の矢島家が管理していた鷹狩場であったのか、という目でぼくは見ています。


雑司ヶ谷霊園2120824


雑司ヶ谷霊園のサルスベリ120824


雑司ヶ谷の幼虫120824

 雑司ヶ谷は自然が豊かなところで、ふと目に入った蝶か蛾の幼虫を撮ってみました。これが何なのかは、どなたかがご存じでしょう。教えていただければ幸いです。 


東京音楽大学120824

 雑司ヶ谷霊園を抜けてもう鬼子母神堂に近い辺り、東京音楽大学を見つけました。
 斬新な外観の建物でした。


鬼子母神堂第一印象120824

 さて、いきなり目の前に大きな鬼子母神堂が広がりました。
 また横の方から入ってしまったようです。


鬼子母神拝殿横120824

 鬼子母神堂(法明寺)のホームページによりますと、
 その昔鬼子母神となった女性はインドで訶梨帝母(カリテイモ)とよばれ、性質は暴虐で、近隣の幼児をとって食い恐れられていました。
 お釈迦様は、その過ちから帝母を救うことを考えられ、その末の子を隠してしまいました。その時の帝母の嘆き悲しむ様は限りなく、お釈迦様は、「千人のうちの一子を失うもかくの如し。いわんや人の一子を食らうとき、その父母の嘆きやいかん」と戒めました。
 そこで帝母ははじめて今までの過ちを悟り、お釈迦様に帰依し、その後安産・子育の神となることを誓い、人々に尊崇されるようになったとされています。
 ところで、雑司ヶ谷の鬼子母神堂の鬼子母神像は、鬼形ではなく、「羽衣・櫻洛をつけ、吉祥果を持ち幼児を抱いた菩薩形の美しいお姿をしている」そうです。そのため、正しくは角(つの)のつかない鬼の字を使うのですが、インターネットではどうしたらよいかわからず、ぼくはそのまま「鬼」の字を使っています。ご了承ください。


鬼子母神拝殿120824

 鬼子母神堂のあるお寺は日蓮宗の寺院で法明寺というのですが、ホームページによりますと、「もともと鬼子母神信仰は平安朝の昔から一般的な信仰としてありましたが、法華信仰に生きる者、日蓮宗に属する者にとって、鬼子母神はただ単に子供を守る神であるばかりでなく、信者・宗徒の外護神として崇められています」とのことでした。
コメント
ディックさん こんばんは^^
オ~~ッ!セスジスズメの幼虫カッコイイですね~♪  調べたところによると、成虫の腹部背に二本の銀白色帯が走っていることから名前が付いたとあります。 成虫見てみたいものです^^
【2012/09/10 00:38】 | nekocchi1122 #4v6QK5lk | [edit]
hirugao さん、
鬼子母神というのは、東京だけなのでしょうか。
時代小説の舞台というと、大概は江戸なので、江戸の史跡を歩くとなると、東京中心になるわけなのですが…。
【2012/09/09 12:40】 | ディック #- | [edit]
nakamura さん、ありがとうございます。
遠征までは無理なので、近場でリハビリを兼ねて歩こう、ということなのですが、やはり思い入れがあると楽しくなります。
【2012/09/09 12:38】 | ディック #- | [edit]
樂 さん、
夏で明暗差が激しいため、やっていることは単純です。
1.白飛びを作らない。2.黒つぶれを作らない。
というふうに修正すると、コントラストが弱くなるので、中間部分のコントラストのみを強調する。
人間の眼は、明るいところと暗いところを別々に見て、脳内で全体像を形作ります。
それを一枚の画像で再現しようとしているので、じつは「不自然」なのですが、「わかりやすい」画像にしています。
【2012/09/09 12:36】 | ディック #- | [edit]
ななごう さん、
>辞典を読めばドイツ語を理解する事が出来ますか?
フランス語の経験からすると、基本的な文法を学んでいないと難しいのではないでしょうか。
助詞、助動詞、語順、冠詞などで引っ掛かって、フランス語の場合、そこがわかっていないと、わけがわからなくなります。
逆に言えば、その気になれば基本文法くらいは短時間で習得できそうな気もしますが…。
【2012/09/09 12:31】 | ディック #- | [edit]
ななごうさん、
これはと思ったらすぐに試してみる、その実行力に敬服いたしました。季節はこれからだと思うので、いろいろなホトトギスに出会えたらいいな、と思っております。
【2012/09/09 12:27】 | ディック #- | [edit]
ななごうさん、ありがとうございます。
もうひとつは中山競馬場近くでしたか。
神社やお寺の建物の造りについて、できるだけ後から写真を見てもわかるように、との配慮をして撮影しています。
【2012/09/09 12:25】 | ディック #- | [edit]
紗真紗 さん、
小説の舞台を訪ね歩く、という趣向でした。個人的な趣味になりますが、時代小説が好きな物ですから。鬼子母神堂は有名ですので、見に行ってよかったと思います。
【2012/09/09 12:23】 | ディック #- | [edit]
この鬼子母神は有名ですね。
でも関西にはこのようなお寺は知りませんが・・・

ビルの近くにあルこのしっとり感は
たまらないですね。
【2012/09/09 10:39】 | hirugao #J7S1TTU6 | [edit]
おはようございます。

良いお話の鬼子母神でした。
また、こういう散策はすばらしいです。
虫のおまけまで・・・(笑い)。
【2012/09/09 07:47】 | nakamura #- | [edit]
鬼子母神堂の写真は、ドラマチックトーンほどのコントラストでないと言うことは、現像処理時の暗部処理でしょうか?
不自然に感じるが、イメージ的には面白いです。
【2012/09/09 05:11】 | 樂 #M8XIDdVw | [edit]
記事とは全然関係有りませんが、御免なさい。

私、この頃ドイツ語に興味が有りましてユウチューブでドイツ語の歌を聞いて居ます。
ウエストファリアナイチンゲールと云うグループです。
このグループの歌が凄く気に行って居ます。
数曲をお気に入りにしています。
ディックさんがフランス語に精通されて居る様ですので、伺いますが辞典を読めばドイツ語を理解する事が出来ますか?
【2012/09/09 04:17】 | ななごう #- | [edit]
台湾ホトトギス、何とかの横好きとでも云うのでしょうか?
その時点で良いなーと思ったものは躊躇なく実行するタイプです。
見た時は、すごく良いなーと思ったんですが。
いざ、花が咲いたら違って居ました。残念。

空見さんの処に書いちゃ悪いかなと思いまして、こちらに入れました。
【2012/09/09 03:58】 | ななごう #- | [edit]
ディックさん、おはようございます。

東京に3ヶ所有ると云われる鬼子母神、池袋と上野は知って居ました。
恐れ入谷の鬼子母神は余りにも有名ですね。
最後の3か所目、判りませんでしたのでネットで見ましたら市川の中山競馬場の近くの様です。
どうして中山が江戸に入るのか?は知りませんが江戸前寿司と同じ様な感覚で執ればいいんでしょうかね。
中山は上総だと思うのですが。

今まで、きしぼじんだと思って居ました。
どうも違う様で、きしもじんなんですね。
日本語は、難しいです。(笑)

神社や寺の造りを見ますと、紗真紗さんが詳しそうな波風やその他の部分にどうしても目が行ってしまいます。
この建物も立派ですね。
【2012/09/09 03:26】 | ななごう #- | [edit]
ディックさま^^こんばんは~♪

いろいろ勉強になります。。。
歴史を感じます、鬼子母神堂ですね。
扁額などからも角のない、鬼子母神なのですね。
私でしたら見逃しておりました。
やはりPCで、点のない文字が出てきませんでした!!
いつも、ありがとうございます~♪
【2012/09/08 23:14】 | 紗真紗 #- | [edit]
自然を尋ねる人 さん、
誌の記事を見たかみさんが、「わが家にもいた」と調べてくれて、成虫まで確認しました。
確認したかみさんは、きれいな蝶になるかと見逃したのに…、とぶつぶつ言っております。
【2012/09/08 23:00】 | ディック #- | [edit]
スズメガの仲間の幼虫のようですが
我が家で7月末に発見しておりまっす。
花の東京のど真ん中にいて、
広島県の東の端にもいる。
ちょっとしたロマンを感じました。
【2012/09/08 22:23】 | 自然を尋ねる人 #VgfFJ5pE | [edit]
FREUDE さん、
江戸三大鬼子母神というのがあるそうで、二つはよく知られています。ひとつが雑司ヶ谷、もうひとつが上野に近い入谷。入谷の鬼子母神は明るく近代的で、雰囲気には欠けるようです。
「恐れ入谷の鬼子母神」とは大田南畝の狂歌だそうで、よく使われたようですね。ぼくも何度も耳にしたことがあります。
フランス語専攻だったので、ドイツ語の入力の話にはついていけません。ごめんなさい。
クラシックで歌を歌われる方は、ドイツ語専攻がよいでしょうね。
【2012/09/08 22:13】 | ディック #- | [edit]
ころん さん、
小説の世界に惹かれての散策だったので、江戸時代にどれだけ庶民に大切にされていたかとか、いろいろなイメージが重なり、鬼子母神信仰を肌で感じ取ることができました。
【2012/09/08 22:05】 | ディック #- | [edit]
YAKUMAさん、
鷹見塚ですか…、鷹狩りの施設跡…、だから自然環境に恵まれていらっしゃるのでしょうか。
ぼくの場合、小説のイメージに後押しされて、歴史に現実感を感じながら散策してきました。
【2012/09/08 22:03】 | ディック #- | [edit]
関西の私は行ったことがありませんが
「恐れ入谷の鬼子母神」などと
言葉をもじった言い方を何度か耳にしました

ネットでの投稿やコメントの入力で
ドイツ語のウムラォトが表示されず、
悲しい思いをしております
【2012/09/08 22:01】 | FREUDE #6AWUBD.o | [edit]
ひろし さん、ありがとうございます。
かみさんと一緒に成虫も確認しました。わが家で見つけたのだけれど、蝶だと思って生かしておいた、と。「蛾だっていいじゃないか」と言いましたが、「こんな姿なのか…」とがっかりした様子でした(笑)
【2012/09/08 22:01】 | ディック #- | [edit]
takae h さん、コメントありがとうございます。
「管理者だけに表示を許可する」にチェックを入れられていますね。
とくに SECRET の必要もないと思うので、間違いかな、と。
確かにふつうのお寺とはかなり様子が違いました。長い信仰の歴史を感じさせます。
【2012/09/08 21:58】 | ディック #- | [edit]
このコメントは管理人のみ閲覧できます
【2012/09/08 21:41】 | # | [edit]
 鬼子母神堂 角のつかない鬼
信仰に生きる人の姿が見えてきます。
現代につながりますね。

信仰は宗派によりますが人の形成であったと思います。
良いお話ありがとうございます。
【2012/09/08 20:27】 | ころん #- | [edit]
こんばんは
我が家の近くには、鷹見塚といって、徳川将軍家のお鷹狩りの施設跡(?)があります。
鬼子母神、鬼の角が無い理由が分かりました。
ここも訪れてみたいとは思っています。
【2012/09/08 20:17】 | YAKUMA #0p.X0ixo | [edit]
セスジスズメの幼虫です。これほど目覚ましいデザインの姿をしているのに、成虫はまったく目立たない姿です。成虫は、まだ出会ったことがありません。
【2012/09/08 19:20】 | ひろし #FFrZaXh. | [edit]
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