
前回の「横浜市こども植物園の『イギリス産の秋バラ特集』(2)」は、デヴィッド・オースチン社作出のイングリッシュローズの写真を並べました。
これをご覧いただいた 山ぼうしさんから、「ご紹介のバラは花弁数が多いですね。さらに、付き方(巻き方)も違います」とのコメントをいただきました。
上記の点について、少し解説ないし補足をしたい、と思います。
花弁数が多く芯のあたりの巻き方がぎゅっと詰まった感じのバラの花は、デヴィッド・オースチン社作出のバラの大きな特色ですが、そうした花の咲き方はけっして目新しいタイプのバラではありません。
上の写真の図のバラは「ロサ・ケンテフォリア」(Rosa centifolia)といい、ナポレオンの時代に描かれた絵です。
ナポレオンの妻、フランス皇后として知られているジョゼフィーヌは、1799年にマルメゾン城という古城を購入し、世界中のめずらしい植物を集めた庭園を造りました。
その中でも有名なのはバラのコレクションです。
彼女は銅版画の植物絵を得意としていた画家ル・ドゥーテに、集めた植物のカラー銅版画を作らせ、記録しました。
私がこんなことを知っているのは、ル・ドゥーテの美術展が開催されたときにそれを見にいき、勉強したからです。ちなみに、このときル・ドゥーテのロサ・ケンティフォリアの額装絵(もちろん原画ではありません)を購入。現在は居間に飾っています。
バラは古代オリエントやギリシャ、ローマ帝国の時代から存在していたとされ、ジョゼフィーヌはナポレオンが皇帝だった時代に、古いバラも含めて多種のバラを集めて、それらをル・ドゥーテに描かせました。
ル・ドゥーテの原画はルーブルの火災で大半が焼失したそうですが、『バラ図譜』という書物が残っており、マルメゾン城のバラ園を受け継いで復活させた人もいて、バラの歴史は現在ではいろいろなことがよくわかっているそうです。
デヴィッド・オースチンの功績は、四季咲きで、丈夫で、大きな花を多数咲かせる現代的なモダン・ローズの時代に、こうした古い時代から親しまれていたタイプの咲き方のバラ(オールドローズ・タイプのバラ)をモダンローズとして復活させ、それを広めたことにある、とも言えるでしょう。
なお、ロサ・ケンティフォリアはオールドローズとしていまでもそのまま受け継がれ、生き残っています。ネットで検索すれば写真も見られます。
付録【ツルウメモドキの果実】

撮影場所:小石川植物園
撮影日:2019.11.15
撮影機器:Canon EOS 5D Mark III
レンズ:EF100mm f/2.8L Macro IS USM
ツルウメモドキ(蔓梅擬)はニシキギ科ツルウメモドキ属。