【八重寒紅】

根岸森林公園では、野梅系の早咲き種の紅梅として、「八重寒紅」と「八重唐梅」という梅の木があります。
このふたつの区別がなかなかつけられずにいました。数年前から剪定の際に品種札が外されたままになる木も多く、「名札のない梅はどちらなのか」という問題も生じてきました。
・八重寒紅のほうが少し早く咲く。
・八重寒紅のほうが花数が多い。
・八重寒紅のほうが色が濃い。
などと思ったこともありましたが、陽当たりの具合だとか、単なる個体差の可能性もあり、決め手になりません。

上の諸点と同時に「なんとなく八重唐梅のほうがすっきりとして見える」という印象があるのですが、「なんとなく…」というのではとても困ります。
ここ二、三年、継続的に観察していて、昨年から「あ、そうか」と気が付いたことがあります。
それは、
● 「八重寒紅」は花弁のひとつひとつに皺が寄る。
ということです。
だから、花全体の様子もかたちが整わないし、陽の光を浴びると乱反射をおこし、妙にギラギラと光って見えるのです。本日の写真は陽の光がまだやわらかく、よく撮れたほうです。

アップで撮った「八重寒紅」の花を、ほかの梅と見くらべていただけばよくわかります。花弁がこれほどしわくちゃに見える梅はめずらしいのです。「なんとなく八重唐梅のほうがすっきりとして見える」のは、「八重寒紅は花弁に皺が寄っている」から、比較したときにそう感じられた、ということのようです。
しかし、アップにしたときはあまり美しくは見えない花でも、効用はあります。
白梅の多い早咲き種の梅林の中に、八重寒紅の木が入ると、梅林全体が急にはなやかな感じになります。雰囲気が明るくなり、「春が来たぞ」と散策の気分を盛り上げてくれるのです。
【八重唐梅】

比較対象の「八重唐梅」です。サンプルが一輪で残念ですが、開花していたのは数少なく、アップで撮ることができたのはこの花だけでした。

これは別の梅の木です。
名札が外されてそのままになってしまいました。
根岸森林公園は、2月から3月になると、階段に手すりを付けたり、崖崩れの防止工事をしたり、そういう土木工事が活発になります。予算を消化しようとするからではないか、とぼくは疑っています。
それでいて、紅梅に白梅の名札がかけっぱなしになって数年とか、名札が外されてそのままとか、そういうところはまったく疎かです。
だから自分で判定するしかありませんが、今までに述べた判定基準からすると、これは「八重唐梅」の花でしょう。
花全体ではなく、花弁の一枚一枚に着目します。多少不揃いでも、花弁の一枚一枚に皺が寄っている様子は認められません。