
まだ東福寺にいる。
いまから方丈の「八相の庭」を拝観するのだが、まず上の建物をよく憶えておく必要がある。これは「経蔵」と名が付けられているから、経典を保管しておく建物だろう。

さて、庫裡から入って方丈へ向かう。渡り廊下でこの光景が目に入る。
方丈前の「南庭」だ。じつは東西南北に庭があり、「八相の庭」というが、まずは「南庭」だ。ここが方丈の正面で一番広く、メインの庭になる。
左側の門は「恩賜門」、右側の建物が「方丈」だ。
この庭は作庭家・重森三玲(しげもりみれい)氏によるもの。昭和に入ってから活躍した人だが、憶えておいたほうがいい。この人の作った庭は各地にある。

渡り廊下を少し前へ進むと、塀の向こうに先ほど憶えておいた「経蔵」が見えてくる。

もう少し石をアップしてじっくりと見よう。
こういう枯山水庭園では、ほとんどの場合中国の神仙思想の表現であり、砂紋で海を表し、石は蓬莱山などの島を表している。

右へ目をやると、方丈の前で庭を眺めている人たちが目に入る。

方丈を奥へ進んで彼らに仲間入りし、振り返る。見えている建物は「庫裡」で、その左側に通ってきた渡り廊下が見える。
先ほどの写真はこの渡り廊下から撮ったものだ。
方丈の四方、東西南北の庭を回ったが、結局ここへもどってくる。この庭が一番気に入って、ぼくは夕暮れまでここにいた。

夕焼けを誇張した絵画調の写真を撮ってみたが、やや誇張が過ぎて気に入らない。
しかし、まともに撮ると背景の空が飛んでしまって夕焼けにならない。夕焼けに明るさを合わせれば、手前の経蔵と塀が真っ黒になってしまう

そこで「露出の異なる三枚の写真を連写で撮ってカメラ内で合成する」HDR合成を試して見た。先ほどより自然で、今度はなかなかよいようだ。HDRを訳すと「ハイダイナミックレンジ合成」だ。イメージセンサーのダイナミックレンジが狭いのを補う手法である。人間の眼もカメラと似たようなもので、人はこれを脳の中で行っているようだ。
(注)HDRは連写中に手が動き過ぎてしまうとうまく合成できない。三脚など持っていないので、細心の注意が必要だ。またどの程度の露出で三枚を撮るのかの加減が難しい。ある程度大胆にやらないと上手くいかないようだ。



参考のため、カメラが合成した元画像は下の三枚である。どれもカメラが保存してくれている。真ん中が比較的まともな画像だが、夕焼けの色はほとんど出ていない。目ではきれいな夕焼けを見ているので、これでは満足できないというわけだ。
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本日は天候の不安定な午前中に根岸森林公園を散策した。
イチョウ、ケヤキ、サクラは紅葉のピークにあり、本日を逃すといつまた撮影できるかわからない。曇天なら曇天なりに上手に撮ることができるようでなければダメだ、と考える。
三脚を携え、カメラを二台持って出ていった。
いつになく真剣になっていた。ふだんの自分はカメラの性能に頼り、けっして真剣にはなっていない、と反省する。
途中突風が吹き荒れることもあった。空が青黒くなり、かえっておもしろい写真になったかも知れない。
これを書いているいま午後2時40分、ようやく陽が射してきたが、根岸森林公園での撮影は向きの関係で午後になるとよい写真を撮ることができない。あれだけ真剣に撮ったのだから、たとえ曇天であれ、相応によい写真が撮れたはずと思うが、さてどうだろうか。