FC2ブログ

薬師寺の白鳳伽藍

2011.10.25(18:30)

 あまりのきらびやかな印象に度肝を抜かれた感じの薬師寺白鳳伽藍ですが、じつは内部をじっくりと歩き回ってベストの構図を捜すとか、そういうことをやっていなくて、よい写真がほとんど撮れていません。もったいないことなのですが、事情があります。
 じつは、この薬師寺特有のハプニングがありまして、それが理由なのでした。
 それについては少し後に書きます。
 (なお、一昨日の最後は「印象写真」です。曇り空の夕刻、カメラが捉えた現実の色彩はこちらのようにもっと落ち着いております)


【北門から入ってぐるりと回り込む】

薬師寺へ北から入って回り込む111002

 お寺はふつうは南門から入ります。本尊の仏様を安置している金堂が真っ先に目に入るような伽藍配置になっています。
 ところが薬師寺では北門から入ります。
 そもそもそこから、ぼくはずいぶんと面食らっていました。
 観光客が近鉄の「西の京」駅からくるのがふつうなので、無理にでも「北門から入る」という拝観コースにしてしまったのだな、と気がついたのは、お寺を見慣れた今ごろになってからでした。
 回り込みながら目に入るのは、上のような景色です。左側の塔が「東塔」、袖廊下の右端に「大講堂」の端っこが見えています。中央に屋根をのぞかせているのが「金堂」、金堂の右に塔の先端だけ見えているのが「西塔」です。


大講堂

薬師寺大講堂111002

 建物に囲まれた内側へ入りました。
 あらためて、講堂を眺めます。
 講堂が金堂より大きいというのは、古代伽藍の通則だ、とパンフレットに書いてあります。南都仏教は教学を重んじ、講堂に大勢の学僧が参集して経典を講讃したためだそうです。


古びた味わいの東塔

地味な薬師寺の東塔111002

 五木寛之氏の『百寺巡礼』第一巻「奈良」を読んでいましたから、古びた「東塔」と、昭和56年に復興されたきらびやかな「西塔」をみくらべて、自分はどんな印象を抱くだろうか。それが気になりました。
 「東塔」は工事囲いがしてあって、下のほうを入れて撮すと工事囲いが写るだけで興醒めです。だから下まですべてきれいに撮れた写真はありません。
 後で金堂のお坊さんからうかがった話では、「東塔」は大修理に入るので、あと1ヶ月ほどで幌をかぶってしまい、当分のあいだ姿を見ることはできなくなります。

薬師寺東塔ほぼ正面111002


復興再建された西塔

薬師寺西塔111002

 「西塔」は、ははあ、やっぱりきらびやかです。これもいいじゃないか、と五木さんは思ったそうですが、ぼくも同じです。これはすごい! 当時のままの彩色というのは、とても美しい。
 大講堂のところから、真ん中に金堂、左側に「東塔」、右側に「西塔」が並んだ写真をなんとかして撮れないものか、と四苦八苦していたとき、「金堂」から大声で呼ばれました。
 「いまから本日最後の案内説明をします。どうぞお集まりください」と。
 (上で苦労して撮っていた写真は、結局ボツにしました。どうにも不自然です。無理な広角の写真は、やはり撮らないほうが無難です)


薬師三尊像を安置する金堂

薬師寺金堂修正版111002

 金堂へ入りますと、薬師如来が真ん中に、右左に日光・月光菩薩が立っています。合わせて薬師三尊と呼ばれているようですが、大きく、暗い艶を放ったうつくしい肌合いの仏様です。
 その右側のスペースに椅子が並べられてまして、「どうぞ、どうぞ」と座らされて、お坊さんのお話を聞くことになりました。
 大阪弁で、なんだかテレビでお笑い番組の司会をされているような、そんな感じのお坊さんなのです。
 
 ここで聞かされた話は、じつはこれまでも少しずつ書いています。
 要約します。
 「奈良のお寺は日本に中国から渡来した仏教文化を広めるため、国家的な政策で建てられたもので、だから檀家がない。お墓がない。では何をするかというと、仏教のことを勉強し、研究するのが僧たちのお役目」で、国威発揚、鎮護国家を狙い、外国からの賓客や一般の人々を、ああっと驚かせるほど立派でなければならなかった、というわけです。
 上のような奈良の仏教「南都六宗」の解説をしっかりとされた上で、「しかしお寺も古くなって傷んでくれば補修しなければいけません」という話になります。「だけど檀家がないのに、どうやってその費用を賄うのか?」。そこで高田好胤さんの話が出てきます。
 この方は薬師寺第124世管主で、「写経勧進」といういままで誰も思いつかなかった方法で金堂、西塔など薬師寺の伽藍を復興させたのでした。
 金堂を再建し、西塔を復興させようといっても、当時一人1000円でおよそ百万人から資金を集めたい。それにはみなさんには写経をしていただいて、そのお経は納経して薬師寺に永代残されることになる、というわけです。
 「何をバカなことを」と各界から批判を浴びながら、高田好胤さんは全国を講演して回って「写経勧進」を推進したのだそうです。
 現在は「東塔」の補修が必要だということですが、いま使われているのは特別製の和紙で作られ、下にモデルとして書かれたお経が見える。なぞるようにして写経して、そのまま円い筒に入れれば薬師寺に郵送される。この和紙のセットを2千円で買ってください、というわけです。どうも最高で一口1万円のコースまであるようです。なるほど、よく考えられています。
 善し悪しの議論は別にして、ほれ、後ろを振り返れば、目の前にきらびやかな大講堂があり、美しい「西塔」が西日を浴びている。ああ、ここにきてよかった、と思われますでしょう? というわけです。
 語りがお上手なので聞き入ってしまいましたが、気がつけば時刻はもう4時に近づいて、このあと、せっかくですからもっとよく薬師三尊を拝観してから、北にある玄奘三蔵伽藍へも行かなければなりません。
 薬師寺の写真が少ないのは、じつはこのような事情があったのでした。


正面の美を愛でたい大講堂

薬師寺大講堂正面から111002

 「金堂」の写真を撮ろうとしていたとき呼ばれたので、「金堂」にはあまりよい写真がありません。
 呼ばれる直前に、上は「金堂」前から撮った「大講堂」ですが、この写真からは紗真紗さんのおっしゃる「正面からの美」が感じられます。
 本日の写真の最後ですから、少し派手めに演出しております。

 もう少し晴れて陽が射していれば、「演出レタッチ」なしで西日に輝く「西塔」や「講堂」を撮れたことでしょう。

2011年10月25日

  1. 薬師寺の白鳳伽藍(10/25)