根岸森林公園のツバキの画像がまだたくさん残っているので紹介したいが、前回同様に素っ気なく並べては芸がないので、今回は少し情報量を増やそうとしてみよう。
ツバキの花は品種が多いが、花の色とかたちを言葉で表現できないと、コミュニケーションに支障を来してしまう。
まず、ヤブツバキ系とユキツバキ系とに分けて考えないと始まらない。
ヤブヅバキ系のものはその辺にいくらでもあって、雄蕊の根元が独特な筒状のかたちをしていて花糸は白く、花弁は平らには開かない。このことは誰もがよく知っている。紅い色だけでなく、白や淡紅色のものもある。
ややこしいのは、ツバキにはユキツバキ系が混じるからで、これを言葉で説明できないと混乱する。
ユキツバキはヤブツバキに比べ枝が横へ広がり、花弁は水平に開く。雄蕊の筒状部分は短い。ヤブツバキと異なり、実がなっているのを見ることはまずない。
このユキツバキに変種が多く、いろいろと変わったツバキは、ユキツバキを元に作られたものが多いらしい。
品種を憶えようというのではなくて、コミュニケーションとして「こういう花だ」と説明できるように、言葉を憶えようということだ。大まかに、以下のように花の形を「咲き方」で分けて、あとは「花色」を加えて表現すれば、ツバキの花を表現するのにあまり苦労はしなくなる。
「一重」「一重ユキ芯」「一重梅芯」「八重咲き」「唐子咲き」「牡丹咲き」「獅子咲き」「千重咲き」
上で「ユキ芯」とか「梅芯」というのは、雄しべの形状を言っている。「ユキ芯」とはユキツバキの「ユキ」であり、「ユキ芯」は花糸が黄色の雄蕊で、雄蕊の筒状部分が短いものをいう。「梅芯」は梅の花の雄蕊のように、ぱあっと広がった雄蕊をいう。
根岸森林公園のツバキの写真を並べて、これらの分類の説明を試みよう。
注 :「侘助」とか「寒椿」とかは例外として横へ置いておく。例外は別として、基本的な考え方から憶えないと混乱するばかりだ。
【紅・ユキ芯】

紅色で、一見ヤブツバキが大きく開いたように見えなくもないが、雄蕊の形状がヤブツバキとは違う。雄蕊の根元の筒状部分がヤブツバキより短く、花糸が黄色のものをユキ芯というそうだ。
【紅・梅芯】

紅色の梅芯咲きだ。雄蕊が梅の花の雄蕊のようにぱあっと広がっている花を梅芯 (ばいしん)咲きという。
【白・梅芯 または しぼり・梅芯】

白の梅芯咲きと言いたいところだが、紅色の筋が入っている。
園芸種の分類では、この程度でも白ではなく「絞り」と呼んでいるようだ。
【紅・千重】

紅色の千重 (せんえ) 咲き。ビンク (英語をさけるなら淡紅色) の千重咲きには、よく知られている乙女椿がある。
【紅・獅子咲き】

雄蕊がこのような形状に変化して咲いている花を「獅子咲き」という。調べてみると、根岸森林公園のこの花は「唐獅子」と呼ばれる品種とよく似ている。
【淡紅色絞り・八重咲き】

一見して獅子咲きではないかといいたいところだが、同じ木で別の花を捜して撮影すると、下のように雄蕊がきちんと残っている。これは一応八重咲きとしたい。
いずれにせよ、花の八重咲き種というのは、雄蕊が花弁に変化したものが多く、雄蕊の痕跡が残っているものも見られる。

【紅・しぼり (または斑入り)・八重】

しぼりと言いたいところだし、それでもよいと思うのだが、色の模様がこの程度だと「斑入り」と表現する場合も多いようだ。このツバキは、わが家の斜向いの叔母の家の庭で撮影した。
【紅・唐子咲き・卜伴】

上の画像は2007年2月に近所のお宅で撮影した。雄蕊がこのような形状に変化した咲き方を「唐子咲き」
という。そのうち、外側が紅色で内側が白 (クリーム色) のこのような色の花は「卜伴」というらしい。
青いハナニラを撮影したSさん宅の庭で撮影したのだが、2007年頃に居住していたおじいさんは引っ越しして、その後にSさんが入居された。おじいさんは引っ越しのときに、この「卜伴」の鉢を持っていってしまった。
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【獅子咲きツバキに見られる雄蕊の痕跡】

とんとん さんから、「獅子咲きツバキの花をかき分けたら雄蕊はあるのか」と質問がありましたので、上の写真を掲載します。答えは「その花によりけり」であり、写真のような感じに「多少は見つかる」花が多いように思います。夏に「ヤブカンゾウ」をじっくりと観察されると、似たような状況にぶつかることが多いです。
下記のリンクをクリックしてみてください。
→ ヤブカンゾウ ~ 雄しべの痕跡、八重になり損ねたヤブカンゾウ