
三菱一号館美術館へ出かけたついでに付近の様子を見てきました。
イチョウはまだ残っていました。
高層ビルとイチョウ並木。これもまた、ひとつの秋の風景ですね。


上のように、人工物と自然との組み合わせ、大都会東京ならではの風景です。
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有川浩さんという作家さんをご存じでしょうか?
テレビ・ドラマ「フリーター、家を買う」の原作者で、「ラヴ・コメの帝王」というくらい、恋愛ものを書かせたら上手な方です。じつは女性作家で、「ありかわひろ」と読みます。
『植物図鑑』という題名の小説がありまして、なんとまあ、ここ「ディックの花通信」の常連さんのために書いているのではあるまいか、というような物語。
初春の寒い夜、会社帰りの若い女性 さやか が行き倒れになりかかった男を見つけます。
「拾ってください。噛みません、躾けはよく出来ています」と懇願されて一晩の宿を提供すると、翌朝すばらしい朝食が待っているのです。
都会育ちの女性が、この若者に野草の名前を教えられ、タンポポの天ぷらなどから始まって、野草狩りの魅惑の虜となり、ついでにこの若者を好きになっていきますが、彼は名は「樹」と書いて「いつき」と読むと教えてくれただけで、謎の同居人であり続けます。
野草採りに出かけるときは、いつき は高そうなカメラを携えています。金がなくて行き倒れになりかけたという若者なのに…、と さやか は不思議に思いますが、このいまというときを大切にしたくて、彼に事情を訊ねることができません。
小説の目次の表題はすべて野草の名前で、連作短編のようにして、おいしそうな山菜料理に絡んだ物語が展開していきます。野草の魅力にはまっていく さやか のこころの描写が見事です。話の展開はおおよそ読めるにせよ、最後は泣かせてくれます。
メジャー・デビューの頃から有川浩さんのファンでしたが、こんな上手な作家さんに成長されたかと、とても嬉しく感じます。
ついでですが、表表紙と裏表紙の裏は、きれいな写真の図鑑になっていて、登場する野草たちがわかります。(みなさんはもちろん、ご覧にならないでもおわかりになります) 後書きの後に、写真付きのレシピが並んでいます。物語はたいへんおもしろいです。